ワレモコウ(吾亦紅) 

われも又 紅なりとひそやかに

虚子


「やぁ!」

両腕に抱えるほどの花の束を、
肩に担ぐように持っていた。
胸に抱えるように持つのではなく、
無造作に、
片手で肩に乗せるようにもつ
そんな姿は、とても高野らしかった。
まるで、
任侠ものの映画に出てくる
男の優しさを表すシーンのようで

「吾亦紅だ!」

「お前の店に合うと思って。。」
照れながら
ことさらにそっけなく
突き出した
花束を持つ手の
きれいな長い指先が
印象的だった。

「ありがとう!」

野翁は
空になった紹興酒の
大きな瓶に、
まるごと
やはり、無造作にそれを入れた。

「 寄り道を知らぬぶきっちょ吾亦紅 」

バラ科

吾も亦 紅ありたくて 花に問う

野翁

花の歳時記

2008


長月・神無月・霜月・師走